No.2|“やりたいことを諦めない”心も体も動き出す「歌の会」が生んだ変化

年を重ね、思うように体が動かないという方も多くいらっしゃると思います。そうなると、やりたいことを心にしまい込んだり、他者との交流が少なくなることもあります。

しかし、『クラーチ・メディーナ稲田堤』では、日々生活する“ホーム”だからこそ、暮らしの中に楽しみや他者との交流を生み、「やりたいことは実現できる」人生を共につくっていきたいと考えています。

そんな想いの中で生まれた、ご入居の皆様とスタッフで取り組んでいる「歌の会」をご紹介いたします。

1.スタッフ・ご入居者がチームとなり、連携してつくる「歌の会」

ケアスタッフ・看護スタッフ、そしてご入居者までもが一丸となって、スムーズな移動となるように力を合わせます。

そして、会場入り口のドアが開いた瞬間、「歌の会へようこそ~!」という歓迎の声が響き、到着したご入居者の心もワクワクするのが感じられます。

歩行器をお使いの方も、車いすに乗っていらっしゃる方も、自然と会場に惹き込まれていきます。

2.心も体も自然と動き出す「歌の会」の力

『東京ブギウギ』や『幸せなら手をたたこう』のピアノ生演奏とともに、体を動かしながら歌います。

パーキンソン病のI様は、声が小さく明瞭な発声が難しくなっています。歩行時に足が上手く出せないことや食事の際にフォークが上手く使えないこともあります。しかし、いつも歌に合わせてとてもしなやかに踊ってくださいます。

楽しい時間を過ごされると、「踊るところ、体を動かすところが楽しかった」と、歌の会をとても喜んでくださいます。

他にも、「懐かしい、子どもの頃を思い出します」「ストレス解消になりました」と嬉しい感想をいただいています。

歌うこと、そして、同時に体を動かすことは、認知症予防や嚥下機能の向上、ストレス解消、脳の活性化と高齢者の方にとって良い効果が多くあります。

3.「歌の会」から発展し、オリジナル体操作りへ

歌の会が巻き起こした変化はご入居者だけではありませんでした。回を重ねるごとに参加するスタッフも増え、一緒に歌って踊るスタッフ、フロア業務の合間に見に来るスタッフ、訪問看護スタッフからも「参加したい」と声をかけられるようになりました。
スタッフとご入居者、そして、ご入居者同士のコミュニケーションが増えたことから、これまで以上に、より多くのスタッフが参加できる『稲田堤オリジナル体操』を作ることに。

長いマスク生活の中でも、ご入居者にスタッフの素顔を知っていただき、より身近に感じていただけるよう、東京ブギウギの曲に合わせてスタッフ全員が登場するオリジナル体操動画を作りはじめました。

この動画をレクリエーションの一環として取り入れることで、スタッフをより身近に感じていただくだけでなく、いつでも安定して体操の機会を提供できるようになってきています。

4.ご入居者の新しい夢が生まれる

回を重ねるうちに、ご入居者から「合唱がしたい」という声が上がり、コーラス部が誕生しました。歌の会以外の時間でもご入居者同士が自然と集まり、共有スペースに用意のある歌詞カードを使い、歌を楽しむ方が増えてきています。

また、そこにはリーダーとして司会進行をする方、ページめくりをお手伝いする方と、自ら進んで役割を担うご入居者の姿もみえます。スタッフがお礼を伝えると、「いいのよ、歌が大好きなんだもの。だって私たちはコーラス部ですから!」と満面の笑みで仰っていました。

スタッフが促すではなく、ご入居者自身が好きなことで繋がり、コーラス部を生みだしていたのです。

コーラス部の夢は、「クラ―チの他ホームと合唱すること」更には、「各ホームを回ってコンサートをしてみたい」だそうです。


クラーチのスタッフは、「やりたいことは、挑戦してみましょう」とご入居者の背中を押します。
できない理由を探すより、実現するための工夫を考えるほうが良い。

年を重ねると、一人でやり遂げるには難しいこともあるでしょう。
だからこそ、“やりたい“を実現するためにスタッフがいます。

「諦めないでよかった」「挑戦は楽しい」と思い、明日をまた楽しく生きていただきたい。
クラーチは、ご入居者にとって「この場所は楽しい」 「この場所に居たい」と思っていただける、温かな“ホーム”になれるよう努めています。


ライター:高橋 慶香 (作業療法士×福祉ネイリスト×WEBライター)