No.8|「立つ」って素晴らしい!「スカイリフト」とともに目線を上に
クラーチ・ファミリア船橋では、そんな願いを持つご入居者が多いことから、普段車いすで生活している方を起立させることのできる補助器具、「スカイリフト」を導入しました。今回の記事では、スカイリフトを通じた新たな取り組みについてお伝えします。

1.「立つ」という動作と、「スカイリフト」
現在、クラーチ・ファミリア船橋では66人のご入居者のうち、33人が車いすを使用し、15人が移乗動作において全介助が必要なレベルとなっています。
人力での介助はもちろん可能ですが、健康上の問題や疼痛、疲労によってどうしても限界があり、また「立って何かをする楽しさ」を見出しづらいという現実があります。また介助者にとっても身体的な負担や疲労が否めないこともありました。
お互いに「楽」に立つことができれば、身体的にも、肉体的にも良い変化をもたらすことができるはず。
では、どうすればそれが可能になるのか?
それこそがクラーチ・ファミリア船橋の課題でした。
【①スカイリフトで、立つ動作も介助も楽に】
「スカイリフト」とは、アイ・ソネックス社による移動用のスタンディング式リフトです。
使用する際には、専用のスリングを背中から通してリフトに固定し、リモコン操作で上昇・下降ができます。
主な使用目的は、移乗と排泄、入浴やリハビリの介助。自力または一部の介助でベッドに座ることもでき、下肢の麻痺や関節の拘縮がある場合でも荷重をかけることが可能です。
また、スリングを装着していることで車いすからの移動もでき、ご入居者にとっても介助者にとってもメリットが多いリフトです。

2.スカイリフトで、納涼祭の太鼓に挑戦
スカイリフトは生活の様々なシーンに役立つと同時に、ご入居者の楽しみや励みにもなります。
【①Y様とスカイリフト】
クラーチ・ファミリア船橋に入居されているY様は、95歳の女性。身体面では頭部前方偏移があり、入院や加齢によって姿勢の維持が難しくなってきていました。日常生活では車いすを使用しているものの、視線が下を向きやすいため、安全面での配慮が必要になっていました。
そんななかでも、Y様ご自身は明るい性格で、「自分でできることは続けていきたい」「周りの人を含め、元気で過ごしたい」との心持ち。クラーチ・ファミリア船橋でも、俳句を詠んだり、アクティビティに参加されたりと、活発に過ごされていました。
【②スカイリフトで、納涼祭で太鼓を叩こう】
Y様はスカイリフトを利用され、身体のストレッチ効果を実感されていました。背筋が伸び、視線が上がり、「まだ動けるんだ」という喜びや安心感、自信に満たされました。
そこでクラーチ・ファミリア船橋は、Y様に個別の取り組みをご用意します。「スカイリフトを利用することで目線が上がる」との気づきと「みんなを元気づけ、勇気づける。それを形にしたい」との思いを、納涼祭で太鼓を叩く取り組みにつなげました。

3.納涼祭で、目線を上に、音を響かせた
納涼祭に向け、太鼓の用意をはじめ、準備も着々と進めます。
ダイナミックな太鼓を再現するには、体制作りも必要。身体評価や太鼓の高さの調整、固定方法など、現在のY様の状態を考慮しつつ、納涼祭ならではの楽しさも盛り込めるように努力しました。まさにリハビリの要素を交えながらアクティビティとして充実させる、理想の取り組みになりつつありました。
準備で張り切る様子は、Y様からも見てとれました。聴力の問題で音楽が聞き取りにくいため、リズムが取れるのか少し心配でしたが、「やるからにはこだわりたい」と強い意思が光ります。リハビリスタッフや看護スタッフの協力のもと、懸命に練習をされていました。不安や緊張の様子は本番まで見られず、「やってやりましょう!」という気持ちが強かったそうです。
【①スタッフとの絆を活かし、明るく楽しく、納涼祭を彩った】
こうして迎えた本番、Y様は気負いすることなく楽しんで過ごされました。堂々とした太鼓とにこやかな笑顔に、ホーム全体が力づけられました。
祭りの法被で雰囲気も出し、いつもとは違うシーンの一員となっていました。
Y様の挑戦には、クラーチ・ファミリア船橋のスタッフの協力も活きたようです。普段から信頼関係を築いていたスタッフのお声掛けで、「あなたが言うなら」とY様は一層乗り気になりました。準備中にもY様にポジティブな心がけを続け、Y様のモチベーションを維持しました。そんな信頼関係があってか、スタッフはY様から祭り用の法被を一緒に着るように促され、嬉しく感じました。
【②楽しい思い出として、今も語り継ぐ】
今回の納涼祭の目的は、周りのご入居者を元気づけるため。ご入居者からの喜びの声も多く、声をかけられるたびにY様は達成感に満たされていました。納涼祭の次の日にスタッフが当日の写真をお見せすると、ハイタッチをするほど。楽しい記憶として残っています。
Y様の挑戦と頑張りもあり、納涼祭での取り組みは社内事例共有会で最優秀賞を受賞しました。それを知ったY様とは再度ハイタッチ。輝かしい記憶としても強く印象に残りました。
介護現場での新たな取り組みは、ご入居者の生活を助けるだけでなく、心の活力にもなります。今回の納涼祭を踏まえ、クラーチ・ファミリアでは今後もご入居者の願いをかなえるために尽力して参ります。
ライター:加藤 小百合

