No.6|「これがしたい!」の実現を全力で支える―古淵で花開く「人生会議」―

介護施設での生活といえば、どんなことをイメージするでしょうか。体調の変化に気づきやすく、いざという時に迅速に対応してもらえ、穏やかかつ静かな余生を過ごせる。そのように思う方は多いかもしれません。

それらはとても大切なことですが、余生を送るタイミングだからこそ、「自分の人生のハイライトになるような素敵な思い出を作りたい」「かけがえのない経験をしたい」との願望が生まれることもあります。

今回は、クラーチ・ファミリア古淵にて行われている、ご入居者の願いを叶える「人生会議」をご紹介します。

1. 古淵流「人生会議」

クラーチ・ファミリア古淵で生まれた「人生会議」とは、ご入居者の看取りに際した取り組みです。

クラーチ・ファミリア古淵では普段からご入居者の看取りに接しているものの、

「ご入居者やご家族のご意向に寄り添えたか?」
「ご入居者にとって最適な形でサポートができたか?」

と疑問を覚えることがありました。お互いの意向の確認が十分でないことから、ご入居者にしっかりと寄り添えているかが不安に感じられたのです。

そこでスタッフたちが集まり、

・その人らしく
・生きることを支える
・つなぐ

という観点から、ご入居者の意向を確認し、その情報を共有することで、その思いを叶えることを目指しました。そのために、

・されたくないこと
・行きたい場所
・会いたい人
・やりたいこと
・好きな香り

などを聞き取り、ご入居者の心からの願いに近づいていきました。この取り組みが「人生会議」です。

2.家族で思い出の場所へ ~H様の例~

今回は、H様の例をご紹介します。

旦那様が旅立たれた88歳のときにクラーチ・ファミリア古淵に入居し、7年が経つH様は、自立心が強く、家族思いの女性。服のコーディネートや席の決め方など、ご自分のルールをしっかりと持ちつつ、ホームからの要望を聞き入れてくださるだけでなく、他のご入居者をサポートするほど面倒見の良い方です。またご自分の部屋にご家族の写真を飾り、ご家族が訪問される際にはいつも笑顔で過ごされていました。

庭いじりや手芸、陶芸、書道、洋裁など多くの趣味をお持ちで、参加されていなくとも共有スペースでレクリエーションは観る、イベント時にはご家族とハーバリウムを作るなど、ホームでの生活を穏やかに送られていました。

【1.「家族とまた出かけたい」を、叶えたい】
そんなH様へ、クラーチ・ファミリア古淵はご家族との外出という贈り物をすることにしました。
お部屋にご家族と色々な場所で出かけられている写真が飾られていて、写真についてお伺いすると当時について嬉しそうに話されるH様。過去には娘、孫娘と金沢へ「女子旅」をしたこともあり、当時の写真もしっかりと保存されていました。

そこで、H様とご家族との思い出作りの一環として、ご家族との外出をご提案しました。

【2.すべてはH様のために】
「思い出の地、尾根緑道にプリンを食べに行く」。ご家族から誘われたH様は、嬉しそうなご様子でした。尾根緑道はかつてのご自宅から近く、旦那様とよく出かけられていた場所だったからです。

今回の外出に対し、H様やご家族、スタッフに全く不安がないわけではありませんでした。H様ご自身はとても楽しみにされていたものの、普段は車椅子で生活され、お部屋で横になっていることも多かったので、体力の低下や外出による疲労、体調変化への心配はぬぐえませんでした。

とは言え、思い出の場所への外出は、H様にとってはとても大事な希望。ご家族が訪問されたときに笑顔が増え、心待ちにしている様子が明らかに見えました。
だからこそ、H様のご希望を叶えようと、スタッフは一丸となって計画を進めていきました。

3.思い出をもっと幸せな時間に

いよいよやってきた、外出の日。看護スタッフによるバイタル測定の結果、「問題なし。外出OK」となり、健康上での安全性にも配慮し、また「何かあった際に気をつけること」をドライバーに伝えたうえで出発。
ご家族にも協力をいただきながら、家族水入らずの外出が始まりました。

出発前には、ささやかなサプライズも。H様が旦那様からプレゼントされ、いまはご家族が大切に保管されていた指輪をご用意したのです。H様は嬉しそうに指輪をつけ、旦那様との思い出にも浸ることができました。

心を躍らせながら到着した目的地には、すでに家族が待っています。ご家族揃って思い出の道を歩き、ご家族との幸せなひと時を噛みしめました。孫やひ孫から「おばあちゃん、大好き」と抱きしめられ、心温かな時間になったそうです。

幸せな時間が過ぎゆくなか、H様は子、孫、ひ孫を順番に眺めながら「私の血がつながっているのね」としみじみと話されたそうで、ご家族としても「今日外出できて良かった」と思われたそうです。

【1.「思い出の1ページづくり」に立ち会えた】
今回のH様の外出を通じ、クラーチ・ファミリア古淵ではH様の思い出の1ページ作りに立ち会えたと考えています。H様からご家族へ、大切なものがしっかりと引き継がれている様子を確認でき、「それぞれがその人らしく、生きることを支える、つなぐ」という古淵流のケアが展開できたと思います。

今後も「人生会議」を通じてご入居者やご家族に心から寄り添い、問題や不安を解決し、「その人らしく」過ごせるご提案を続けていきます。


ライター:加藤 小百合